複数台のパソコンやスマートフォン

複数台のパソコンスマートフォンタブレット間でデータを共有したい――。そんなニーズが高まる中、存在感を増してきたのがクラウド型のオンラインストレージサービスだ。定番のサービスは、先日、クライアントソフトメジャーバージョンアップした「Dropbox」、任意に同期フォルダーを設定できる「SugarSync」、月額346円のプレミアム会員に50GBの領域を提供するYahoo!  Japanの「Yahoo! ボックス」などだ。

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 どのサービスも一度使い始めると、なくてはならない存在になるのだが、同時に“ある種のストレス“を抱えることになる。そのストレスとは、限りある“ファイルの保存容量”だ。有料プランで保存容量を増やしてみても、Dropboxで最大100GB、SugarSyncで500GB、Yahoo! ボックスで1000GB(今後提供予定)となる。

 海外には、ほぼ使い放題のオンラインストレージもある(関連記事)が、今度はファイルの転送(アップロード)時間という問題が表面化する。インターネット経由でファイルを転送するのは、パソコンとUSB接続した外付けHDDへと、ファイルコピーするのとはワケが違う。共有したいファイルの数が多くなると、それだけ転送時間を要するのだ。

 こうしたファイル容量とファイルの転送、2つの不満を一気に解決する方法がある。自分専用の「パーソナルクラウド」を作成することだ。手持ちのHDDなどをインターネットに接続させ、どこからでもどんな端末からでも、HDD内のデータアクセスできるようにするわけだ。

 パーソナルクラウドに使う外付けHDDは自由に選べる。大容量のデータを共有したいなら数TBの最新の外付けHDD、導入費用を抑えたいのなら手元の外付けHDDを使えば良い。容量がいっぱいになってもHDDを交換すれば、また大量のファイルを保存できる。さらに運用コストインターネット代と電気代だけなので、長い目でみるとクラウドストレージの有料プランを使うより費用を抑えられる。

 パーソナルクラウドといっても、ようは外付けHDDの活用だ。このため大容量のデータを転送したいときは、パソコンにUSBでつなぎ、ファイルコピーできる。ネット経由で転送するのと比べ、作業時間は大幅に短くなる。

 今回は、ソフトバンクモバイルが「SoftBank SELECTION」の1つとして販売している米クラウドエンジンズ「Pogoplug Mobile」を使って、仕事やプライベートで活用できるパーソナルクラウド環境を構築したい。

誰でも始められるらくちんパーソナルクラウド

 使用するのは、2月3日に発売された「Pogoplug Mobile」(実勢価格7980円)だ。これに外付けHDDなどを接続して利用する。1年前に発売した初代Pogoplugは、カタツムリのような奇抜なデザインだったが、2代目となるPogoplug Mobileはシンプルデザインに変わった。同社によると、容積率で40%小型化。ソフトウエアも改良を加え、通信速度は従来比80%高速化させたという。

 パーソナルクラウドの導入に、Pogoplugを利用するメリットは何か? ひと言でいうなら“手軽さ”だろう。設定も操作方法も実にシンプルだ。専門的なネットワークの知識がなくても、簡単にパーソナルクラウドを導入できる。何しろPogoplugの背面には、AC電源を接続する端子のほか、LAN端子とUSB端子が各1つずつしかない。インターフェースからしてシンプルだ。

 導入手順もたった4ステップ。まず有線LANケーブルを使って、PogoplugのLAN端子とルーターを接続する。続いて、USB端子に外付けHDDやUSBメモリーを接続する。このUSB端子に接続した機器が、パーソナルクラウドとしてデータの共有スペースになる。続いてPogoplugの電源を入れる(付属のAC電源をコンセントに接続する)。

 あとはパソコンブラウザーで「my.pogoplug.com」を開き、Pogoplug用のユーザーアカウントを取得する。10分もあれば、Pogoplugの初期設定が完了する。

専用アプリパーソナルクラウドアクセス

 Pogoplugの導入が終わったら、続いてクライアントソフトの導入作業に入る。パソコン(Windows、Mac、Linux)、スマートフォンタブレット(iOS、Android)それぞれに専用アプリ(無料)がある。これらのアプリを各端末にインストールし、取得したPogoplugのユーザーアカウントログインする。

 パソコン版のPogoplugクライアントを導入すると、ローカルの外付けHDDと同じようにマウントされる。筆者のMacbook Airにクライアントを導入してみたところ、デスクトップにPogoplugのアイコンが現れた。このアイコンクリックすると、Finder(Windowsでいうエクスプローラー)が起動し、保存しているファイルが表示された。通常のHDDと同じように、ファイルの表示やコピーが可能だ。

 あたかも内蔵HDDのように操作できる……というのが特徴のわけだが、ファイルへのアクセスする時間は通信環境によって左右される。上りの通信速度が実行1Mbps足らずのADSL回線を使ったせいか、パーソナルクラウドドライブを開くのに20秒近くもかかった。フォルダーの階層を1つ下へ移動するだけで、ファイル内容が表示されるまで4秒程度待たされる。一度読み込んだフォルダーは、サッと開くようになるが、初回操作時はストレスがたまる。やはり内蔵HDDとは全く同じというわけにはいかないようだ。

iPhoneやiPadでは自動アップロード機能が便利!

 iPhoneとiPad用クライアントの使い勝手はどうか? 動作の重さはパソコン版同様に感じるものの、この不満を上回る機能が用意されていた。その機能とは、内蔵カメラを使って撮影した写真や動画をパーソナルクラウドへ転送する「自動アップロード」だ。

 アップルは、iOS5からiCloudと呼ばれるクラウドサービスを提供している。このiCloudの中に、写真を共有する「フォトストリーム」機能がある。内蔵カメラで撮影した写真などを、MacやWindows 7などと共有できる機能だ。ただし、共有できるのは直近1000枚までで、上限を超えると古い写真が自動的に消去される。また同期作業もWi-Fi接続時に限定されている。

 一方、Pogoplugクライアントの自動アップロード機能では、写真に加えて動画も自動転送できる。3G接続でもアップロードされる。保存容量も、パーソナルクラウド(外付けHDD)がいっぱいにならない限り大丈夫だ。筆者が2年弱使っているiPhone 4には、5000枚を超える写真(画面キャプチャーを含む)が保存されているのだが、この自動アップロード機能により、パーソナルクラウド上にバックアップできた。転送した写真と動画は、クライアントで設定したストレージ上に作られた「Photos」と「Videos」フォルダーに、年単位と月単位でまとめられる。

 新しく撮影した写真や動画を保存するには、Pogoplugクライアントを起動する必要があるものの、ネット経由で動画までバックアップできるのは便利だ。

音楽や動画ファイルストリーミング再生

 Pogoplugの魅力として、音楽や動画のストリーミング再生機能がある。Pogoplugに接続した外付けHDDに、音楽や動画ファイルを保存しておき、パソコンスマートフォンで再生して楽しめるのだ。特にスマートフォンなどは、本体内に保存できるファイルの容量が少ないため、パーソナルクラウドが活きてくる。

 筆者は、昔よく聞いていたラジオ番組を、MP3ファイルに変換して大量に保管している。このファイルをPogoplugの外付けHDDに保存したところ。非常に快適なリスニング環境が整った。3G回線にもかかわらず、iPhoneのiTunesアプリでMP3ファイルを再生しているのと遜色(そんしょく)ない。気になる点としては、日本語のファイルが一部文字化してしまうことと、高ビットレートエンコードしたMP3ファイルが再生できなかったことくらいだ。

 ちなみに動画ファイルも、なんなくストリーミング再生できた。一部のファイルは、ストリーミング用の最適化作業が必要になるようだが、iPhoneで撮影した動画なら問題ない。

 今回、Pogoplug Mobileを使って感じたのは、最新のパーソナルクラウドといっても一長一短があるということだろう。特に仕事用に使うには、まだ厳しい状況だ。内蔵のHDD代わりに使うには、ファイルの閲覧や保存に時間がかかりすぎる。特に屋外で作業するときは、短時間で済ませたいので、一瞬のもたつきが大きなストレスになる。

 やはり作業中のファイルは内蔵HDDに保管し、作業が終わったらパーソナルクラウド上に移動。限りある内蔵HDDの空き容量を増やす……といった使い方が現実的だ。

 現行のユーザーには、「Pogoplug Cloud」という5GB分の無料オンラインストレージが提供される。このオンラインストレージを使う分には、内蔵HDDなみの速度でやり取りできた。でも保存容量を上げるには、有料プランを購入しなければならない。つまりお金をかければ快適だが安く済ませようと思うと、軽快さには多少目をつぶらなければならない。ともあれ、Pogoplugはパーソナルクラウドを身近にしてくれた点では、大いに評価できる。クライアントの使い勝手向上と、さらなる高速化を期待しつつ、パーソナル活用を模索していきたい。

原 如宏(はら ゆきひろ)パソコンから食べ物まで、ジャンルにこだわらず手がけるライター界のなんでも屋。モバイルノート&iPadをカバンに入れ、365日都内のカフェを巡りながら執筆活動を続けている。主な連載はYomiuri Onlineの「トラブル解決Q&A」やフロムナウライターHの“デジモノ放談”」など。Twitterの公式アカウント(@raitanohara)にて、最新のクラウドサービスや機器のテスト状況、さらには記事の後日談などをつぶやき中。



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